歴史と未来を繋ぐ・・・桑の木

みつばちっこ

 

 

遅くなってしまいましたが・・・無認可時代から今までみつばちに関わって下さった方にお知らせしなければならない事があります。

先日の台風18号の翌日、運動会の6日前の事です。

京都の被害や影響も大きかったので、西山へむかう道々が心配で、こどもたちが山に行っても大丈夫か一足先に西山へ行った日の早朝。

目の前に・・・いつも私たちを空高く枝葉を広げながら迎えてくれる「桑の木」が、信じられない姿で、ひっそりとした園庭に倒れこんでいたのでした。

 

 

私がみつばちに来た頃、まだ背丈ほどだったこの“桑の木”

前園長(現理事長)の野上先生が「いつか木陰ができたらいいなと思ってね」と、この木の前でやさしく語ってくださったことが忘れられません。その、まっすぐひたむきな「子どもたちに対しての想い、社会に対しての願い」をひとつひとつ感じながら、確かにみつばちの歴史と共に歩み根を張り・・・西山の地が誕生してから32年。この様な姿に生きてきた桑の木でした。

 

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みつばちの植栽や、この桑の手入れをずっと大切にしてくださっていた日日庵の白石さんにすぐ来てもらい、野上理事長にも来てもらい・・・この木の条件や状態、等、本当に本当にさまざまな検討をした上で・・・「この木は今までのみつばちを作ってきた中で育ってきた木。これからは、今、これからのみつばちに関わる人たちが力を合わせて、新たなみつばちを生み出しつくっていったらいい・・・etc・・・」という、理事長の、意思をこめた大きな決断もあり、あわせて、運動会まであと5日しかないという時で、作業的な事を考えるとすぐに決断して明日からの作業に入らなければ間に合わない状態であり・・・一旦、苦渋の・・・でも、前に向くための決断を、台風の翌日にしたのでした。

 

こどもたちが山にやってきて「大変やー!桑の木、たおれてしまってる!」「どうする??」年長のKくんは「Hと一緒に一番上まで登る約束してたのに!!切らんといて!」と・・・。

 

そんな様子を見つめ、ただただながめては涙しながらも、その日が終わったのでした。   倒れたままで、みつばちっこの運動会の練習を見守ってくれた一日でした。

 

 

 

 

そして、桑の木とお別れしなければいけない朝をむかえ・・・その日も早朝の静かな朝、眺めていると・・・その昨晩もずっとずっと考えながら・・・・やっぱり、心が晴れない。

だって・・・この桑の木は、今まで、何百人のみつばちっこと遊んだことか!うれしいときや元気いっぱいな時だけではなく、ちょっぴり寂しいみつばちっこのお話もいっぱい聞いてくれていたよね。枝葉をまるで、こどもたちの心を包み込むように広げて、いつも、そこから見ていてくれたよね。

*ちゃんの姿、*くんの姿・・・この木の下で、上で、周りで、あんなこと、こんなこと、次々姿がうかぶ。い~っぱいい~っぱいあった!

そして、こどもだけでなく、私たち職員と子どもたちとの営み、保育を、いつもいつも見ていてくれたよね。時には、本当に保育で支えてくれた!!この木で保育が見えたこともあった!!「ほら!こどもたちはこう言ってるよ!!」と教えられる事もあった。こどもたちと同様、時に保育のあわただしさや悩みを抱えたときに、ふっと眺めていると・・・やさしく風に吹かれたり、緑の木漏れ日をくれたり、冬のむき出した力強い幹をみせてくれたり・・・そっと我をとりもどす心根を支えてくれた。

 

そんな命ある木なのです。

 

 

・・・・去年の秋の姿・・・

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「やっぱり、どんな形であれ残したい。次の未来も含めて!!」と考えていたとき・・・白石さんも、トラックに長い支柱を積んで到着。実は・・・昨夜の後、もう一度「桑の木」についていろいろ調べてくださったそう。そんな中、樹齢100年以上の天然記念物の「桑の木」があったとの事。さすがに100年とまではいかないが、昨日、この西山の桑の木の寿命はそう長くはないと言ったことは撤回する。と!(この桑の木の今までの歩みと生命力も含め!!)

 

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そして・・・ここまで一緒に全身全霊で子どもたちと生きてくれたこの「桑の木」を一部、残すことにしたのです。確かに、自然な姿でないかもしれない。ここまで無理をさせてしまうかもしれない。でも・・・・この倒れ方も、又、この木の心根そのもので、途中でばっさり折れず、根からじわじわと・・・しかも、まるで「これなら大丈夫」とでもいうように、キウイ棚や園庭側には倒れることなく、自分の身体を雨風と戦わせながら、その道筋を選んだかのよう。

そんな桑の木だから、きっと、ゆるしてくれるよね。最後まで歩んでくれるよね。2本の大きな幹のうち、1本はクレーンで上げて支柱で支えることに。もう1本の幹は上げられないことはないそうだけど、あえて、倒れたまま自然な姿で置いておく事にしました。この桑の木の生き様は、まさに「みつばちの保育」の根源だと思うからです。

 

 

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・・・その後、みつばちっこに見守られながら・・・こんな風に新たな姿となりました。・・・

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倒れたもう1本の幹で遊ぶ子どもたち。新たな姿に又、今までと違うあそびっぷりが生まれます!

でも・・・これは・・・この桑の木が命を懸けて繋いでくれたもの。

私たちは、ただ歴史に甘んじることなく、この命の重みをしっかりと胸にきざみながら、さらなる未来を創っていかねばならないのです。皆で手を取り合って・・・この生きづらい時代だからこそ・・・その意味を、みつばちに出会ったみんな、関わっているみんなで、自分たちの事として考え生み出していかねばと思うのです。

今の私たちが、未来の子どもたちに願い手渡していける事!いかねばならない事!・・・そんな平和な未来と夢と願いをもって!!

こどもたちの笑顔は未来の輝きなのです!!

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「桑の木を切らんといて!」と懇願したKくん。新たな姿になった桑の木の一番てっぺんに登って・・・「まるちゃ~ん!ここまで登ったで~!!!」

この笑顔を、どの子にも、いつまでも!!!遊べ!遊べ!みつばちっこ!!

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・・・翌週の「もっと西山の日」の光景・・・こどもたちだけでなく、たくさんのお父さん、お母さんが、この木と語りあってくれましたよ!

 

 

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